「深沢幸雄展」と「遠藤健郎展」
千葉市美術館に、「深沢幸雄銅版画展」と「遠藤健郎絵画展ー戦後は終わった」を見にいってきた。御両人とも千葉県在住のアーティスト。
まずは、7階の「深沢幸雄銅版画展」へ。
深沢幸雄銅版画展
2005年1月29日(土)~2月27日(日)
千葉市美術館
深沢幸雄の作品に興味を持ったのは、ミュゼ浜口陽三ヤマサ・コレクションで作品を見てからで、その時見た作品が印象に残っていて、他に作品も見てみたいと思い今回見に行ってきました。
深沢幸雄の作品は、大きく3つに分けられるような気がする。まず初期は、自分の内面を表す作品が多いと思う。ほとんどモノクロ調で作られている。特に「骨疾A」「骨疾B」「骨疾C」「骨疾D」「骨疾E」「骨疾F」の6作品は、東京大空襲で受けた右膝の傷がもとで歩く事もままならなかった、そんな不自由だった足を作品のテーマとしている。長い階段の前に立ち尽くす、足の不自由な男性はまさしく深沢幸雄本人を表したもの。
中期は、1963年のメキシコとの出会いによって、それまでのモノクロ調の作品から、色合いを意識したカラフルな作品が多くなっていく。そしてその作品の多くが、メキシコのインディオをテーマにした物が多い。
そして後期から現在にいたる作品は、幻想的な作品が多いということ。この時期に制作されているのが、ミュゼ浜口陽三ヤマサ・コレクションで見た作品。「星屑劇場」「凍れる歩廊(ベーリング海峡)」等。他にも「影の中の恋人」「アシェンダの地下にて」「憂愁市街(迷路)」あとチラシの使われていた『ローマンス 宮沢賢治「春と修羅より」』など。その時期時期で作風が大きく変わっていて面白い。
続いて、8階の「遠藤健郎絵画展ー戦後は終わった」へ。
遠藤健郎絵画展ー戦後は終わった
2005年1月29日(土)~2月27日(日)
千葉市美術館
遠藤健郎は、常に身近な風俗を作品の対象として、時には辛辣に時にはユーモアを交えながら、社会の様子を伝えてきました。今回は、戦後から昭和の終わりぐらいまでの、社会の様子を描いたシリーズ作品が、一同に展示されています。
『瓦礫の街から』は、時代がまだ戦後の混乱期で、人々の表情が暗く、こわばっている。そんな中で「靴磨き」で、靴を磨かせてる緑のコートを着た女、嫌な感じ。でその嫌な感じが良く表現されていて、作品としてはとっても面白い。また『ある風俗絵巻』《戦後は終わった》や『ある風俗絵巻』《これから先のことは誰も知らない》では、昭和30年代に突入して、街にも人にも活気が戻ってきて、にぎやかな街や人の様子が描き出されている。さらには、そんな街の日陰の場所にいる女性達を描いた、《巷の女たち》がある。
また『市役所物語』は、一昔前のお役所の様子を描いている。いわゆるお役所仕事とよく言われる原因が、このシリーズの作品によく表されていると思う。あと『てんでしのぎ』『海辺の光景』と続く。ちなみに『てんでしのぎ』と言うのは、てんでんつまり、各々で頑張るという意味だそうです。このようにたくさんの作品が展示されているなかで、「ベトナムの子供と兵隊」という作品は、他のどの作品とも違う、異彩を放っている。兵士と二人の子供の表情がとにかく素晴らしい。この絵の前でしばらく足がとまってしまった。
さすがにこれだけの展覧会を続けて観て、ぐったりしてしまった。2つの展覧会あわせて、総展示作品数は約400点。しかも入館料が両方とも観れて200円。安すぎ。いまどき200円じゃ煙草も買えない。これで運営できてるんだろうか。もっとも千葉市は政令指定都市だから、このあたりの予算は十分あるんでしょう。
千葉市美術館に行くのは実は初めてなんですが、建物は綺麗だし、過去の展覧会見ると結構良い展覧会やってます。ボランティアによるギャラリートークも良かった。今後は、ここも要チェックです。
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